« 感謝 | トップページ | 定食屋で »

喉仏

 
 
 
かつて可憐だったであろう女性の雑味混じりの声には緊張感が無く、そのかわりに、声帯の奥底から妙な可愛げが発酵食品のように醸されている。
いくら取り澄ましていても、直立気をつけの声帯では、決してその可愛げに届くことはない。

背後で突然聞こえた、耳を疑うド迫力の咳払い。動物の声だ。補食者の吼える声には、か弱い生き物を停止させる力がある。
振り向いた先にいたのはやはりかつて可憐だった女性で、緩急自在の喉仏にただただ感服するばかり。
仕方なく手を合わせ、頭を垂れる。
 
 
 


« 感謝 | トップページ | 定食屋で »