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ふきのとう

 
 酸味と辛味は通過するものだから、いつまでも口の中にあると気分が悪い。
 居座られては困るのだ。幼い子は、それが嫌だから酸味と辛味に対して門前払いを試みる。

「困ります。ウチに来られても」

 しかし、そこは幼い子。酸味と辛味にいいように言いくるめられ、結局居座られる。幼い子は泣く。酸味と辛味のことをますます嫌いになる。

 まるで自分の家みたいにさんざん自由に居座られ、ひとしきり経ってから、やっと酸味と辛味は出て行った。幼い子は一安心する。

 しかし、酸味と辛味は、また平気な顔をしてやってくる。
 幼い子はすっかり疲れ果てていて、ドカドカとあがりこんでくる酸味と辛味を、ぐったりと横たわったまま、ただ眺めている。

 眺めながら、あきらめながら、幼い子は思う。
 ふきのとうが食べられる日も、そう遠くはないのかもしれない。
 
 
 


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