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金魚の群れ

 
二人で土手を下って、河原に出る。
大小の石がごろごろしている河原はとても歩きにくく、友人と僕はおぼつかない足取りで何だか踊っているような動きをしながら目的の場所に向かう。

金魚の群れを見に行くのだ。

川の脇には大小の水たまりがいくつかあって、その中でもひときわ大きい池みたいな水たまりには、驚くほどたくさんの金魚がいるそうだ。

「でかいよ。ずいぶん」

友人が呼ぶ声のままに池の端を見ると、10センチくらいの金魚が悠々と泳いでいた。まるでフナだ。目をこらしてみると水草の陰や石の間に何匹も発見できる。

「これだけいれば、簡単に捕まえられそうだね」

ためしに手を伸ばして捕まえようとする。野生化した金魚はするりと手のひらをすり抜け、池の中心まで泳いでいった。僕らは逃げた金魚を目で追いかける。池の中心は数え切れないくらいの金魚が密集して、赤インクを大量に垂らしたような色に染まっていた。

赤インクの周囲には金魚以外の魚も泳いでいた。大きなドジョウ、マス、真水クラゲ、国産とは思えない色のついた淡水魚など、ありとあらゆる魚がそこにいた。

「金魚どころじゃないね。どんな魚でもいる」

水がとても澄んでいるので、向こう岸にいる魚まで見ることができる。二人はため息をついて、岸に転がっていた大きな石の上に腰かけた。
そのまま夕暮れになるまで、魚たちを眺めながら長い時間をかけて世間話をした。友人と一緒に遊ぶのはずいぶんと久しぶりなので、話は弾む。互いの空白を埋める時間がだいたい終わる頃、友人がポツリと言った。

「実は俺、今度教師になるんだ」

それはいい。ぴったりだ。本当にいい。
彼の明るい先行きを喜びながら、僕らは日が暮れる前にそれぞれの家路についた。
 
 


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