« 接触面 | トップページ | ぬるい水 »

演技

 
舞台を降りるとき、演技をやめられない自分に気が付いた。

ああ、自分は思ったよりも、この舞台に全てを賭けていたのだな。気が付かなかったな。と他人事のように思いながら眠りについて、

翌朝、やはり演技は続いていて、いよいよ大丈夫かなと修正にかかる。

で、これがなかなか抜けてくれない。演技はしぶとく自分の日常動作の端々に現れる。まるで癌の転移だ。

やがてだいたいの行動規範が、自分ではなく、演じている「そいつ」がどう思うかに依るようになってしまった。

そのまま毎日が展開してゆく。人と会い、新しいことを起こし、放心状態のまま自分は自分の中で、「もう負けました」と言い続けるだけの存在になってしまった。

自分の演じている「そいつ」は、どうやら近々結婚するらしい。相手は「自分」の好みのタイプだ。

嫉妬している。でも、そのやり場がない。
ならばと自分が消えようにも、消えられない。
 


« 接触面 | トップページ | ぬるい水 »