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ぬるい水

 
時計の無い場所でうたた寝をして、起きた。
うたた寝の間は当然意識は無く、そこから目覚める時は大抵「しまった」と焦るのだけど、何がどう「しまった」なのかわからない。何せ時計が無いのでどれくらい寝ていたか計りようがないのだ。

目の前のグラスにはぬるい水が入っている。灰皿はとても冷たい。黄色っぽくて明るい照明の向こうにたくさんの人がいるけど全員知らない人ばっかり。妙に安心しながら思う。

「ああ。一人だ。この上なく一人だ」

今が何時かなんてどうでもいい。
自分が席を立つまでの時間は無限にある。もう一度眠りについても、誰も気にもとめないだろう。

何もしない。そこにいる。眠りこけても夢すら見ない。
自分の時間を自分で決めた結果は、そこに座り続けることだった。
 


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